現代は、コンパクトで携帯しやすい、操作しやすい人工呼吸器が開発されたり、在宅医療の体制が整備されたことで、人工呼吸器を使用しながら自宅で療養できるようになりました。
そのため、訪問看護の利用者さんには、呼吸異常があったり、自発的な呼吸が困難であるため、人工呼吸器をつけて在宅療養する方々が多くなっています。
今回は、訪問看護が行う人工呼吸器装着者の支援について紹介します。
訪問看護を利用する人工呼吸器装着者は、以下の2つに分けられます。
1.非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
→慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全、睡眠時無呼吸症候群などによる呼吸異常がある場合は、人工呼吸器を使用し、肺に圧力をかけて呼吸を助ける必要があります。
※呼吸筋の麻痺により、自発呼吸が弱くなった場合にも、NPPVを使用することもあります。
呼吸補助が必要な場合は、気管挿管をせずに、口や鼻にマスクを装着した人工呼吸器を使います。
2.気管切開下間欠的陽圧換気療法(TPPV)
→筋萎縮性側索硬化症(ALS)、延髄梗塞、重症筋無力症などによる呼吸筋の麻痺がある場合は、人工呼吸器を使用し、自発呼吸を助ける必要があります。
自発呼吸が困難な場合は、喉から気管まで穴を開け、気管カニューレを挿入した人工呼吸器を使います。
訪問看護が行う人工呼吸器装着者の支援は、以下の5つが挙げられます。
1.呼吸状態と体調の確認
2.人工呼吸器のトラブル対処
3.感染予防
4.利用者さんと家族の支援
5.多職種連携
それぞれについて、以下で解説します。
人工呼吸器装着者の訪問看護では、人工呼吸器のモニタ値と合わせて、酸素化能のチェックや血行動態、体調を確認します。
酸素化能(酸素が血液の取り込まれること)では脈拍とspO²の確認、血行動態では血圧の変動、不整脈や心筋虚血の兆候の確認、体調では呼吸パターンの観察、呼吸困難感、不安や不穏などの確認を行います。
※心筋虚血の兆候:胸痛、息切れや動悸、肩の違和感や胃、歯の痛み、冷や汗、吐き気など。
人工呼吸器は様々なトラブルが発生したり、訪問看護でのケア中にアラームが鳴ることが多々あります。
訪問看護では、即座にトラブルを対処したり、蘇生バック(アンビューバック)を使用し、落ち着いて
トラブルの原因を考える必要があります。
人工呼吸器のトラブル、主にアラームが鳴る場合は、以下の3つが理由になっていることが多いです。
①低圧アラーム:どこからか空気が漏れている
②高圧アラーム:痰が詰まっていて肺に空気が入りにくくなっている
③電源不良アラーム:コンセントが抜けている、バッテリー切れ
トラブルが発生しないためにも、人工呼吸器の電源やフィルター、気道内圧、回路の緩み、回路内の水、バッテリー残量などは、訪問看護の時間に確認しておくと良いです。
訪問看護では、肺炎の感染予防として以下の3つを行います。
①消毒
→MRSAや緑膿菌などの肺炎の原因菌の多くが、接触感染であるため、人工呼吸器装着者のケアを行う時には、手洗い、手指の消毒を必ず行います。
→人工呼吸器のモニタは、様々な人が触るため、タッチパネルやボタン操作後には機器の消毒を行います。
②誤嚥の防止
→定期的な口腔内・咽頭の清拭を行います。これは、家族やヘルパーにも協力してもらいます。
→カフ圧を保持するために、適宜圧力を確認、空気の補充を行います。
③吸入(挿管チューブから気管に菌が入り込む)の防止
→気管内吸引操作は清潔操作とし、吸引チューブはしっかりと消毒する。
→口腔や鼻腔を吸引した後のチューブは、アルコール消毒したとしても続けて使用してはいけない。
訪問看護では、利用者さんやその家族に人工呼吸器の使い方や注意点、非常時の対処方法、緊急連絡の手引きなどを指導したり、病状や体調の変化、人工呼吸器の使用などによる心理的なストレスの傾聴などの支援を、日々の業務で行います。
また、利用者さんの生活状況、家族の介助力を確認し、必要に応じて介護保険サービスの紹介、ケアマネージャーへの連絡と提案なども行います。
人工呼吸器装着者の在宅療養生活では、呼吸や病状、体調などを観察して主治医へ報告し、治療やケアを臨機応変に行っていきます。
また、介護保険サービスを利用している方はケアマネージャーを初めとして、ヘルパーやデイサービス、ショートステイ先のスタッフとも情報共有を図りながら統一したケアを提供していきます。
日々の介護を担っているご家族にも、実施可能なケアを提案、指導していき、安心、安楽に在宅生活を継続できるように支援します。
今回は、訪問看護が行う人工呼吸器装着者の支援について紹介しました。
訪問看護では、主に利用者さんの体調、病状について医学的な評価、看護ケアを行いながら、人工呼吸器の管理、利用者さんや家族への指導、心理的サポートを行います。
しかし、利用者さんの病状、家族の介護力、人工呼吸器の管理力などなど、ケースによって必要となる支援は多岐に渡ることもあります。
訪問看護ステーション アスエイドでは、スタッフ間で情報共有やケースカンファレンス、勉強会を通して個別のケースに合ったケアを提案して実践しているので、初めての訪問看護でも安心です!
訪問看護に興味がある看護師、理学療法士の方は、是非、アスエイドまで気軽にお問い合わせください!