2022年時点、厚生労働省が公表する統計による日本の死因で最も多いのは”がん”であり、国民の3人に1人はがんで亡くなっています。
がんの治療は、医療技術の進歩、患者さんやその家族のQOLの向上など、様々な理由により、入院加療よりも在宅療養の期間が長くなっています。
在宅療養するがん患者へのサポートして、訪問看護は重要な役割があります。
そこで今回は、在宅療養するがん患者への訪問看護の役割について紹介します。
在宅療養するがん患者への訪問看護の役割は、以下の4つがあります。
1. 医療ケア
2. QOLの向上
3. 精神的支援
4. 看取り
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
訪問看護師は、在宅療養のがん患者へ服薬管理、栄養管理、点滴やカテーテルの管理、がん性創傷ケア、緩和ケアなどなど、病態に合わせた様々な医療ケアを行います。
特に注力して行う医療ケアは、痛みや不快感の軽減を図る”緩和ケア”になります。
在宅療養中のがん患者への緩和ケアでは、がんの進行に関わらず、早期から始めます。
緩和ケアでは、痛みや呼吸困難感、倦怠感、嘔吐など不快感の身体的な症状の緩和だけでなく、不安や恐怖などの傾聴による心理的サポート、意思決定支援、日常生活での困り事を解決する社会資源のサポートを含みます。
身体的な症状に対しては、訪問看護師が適宜、痛みや不快感の確認を行い、オピオイドや鎮痛剤などの薬物に関して主治医に相談、薬剤の調整を行います。
訪問看護師は、在宅療養中のがん患者のQOLの向上のために生活ケア、家族とのつながりを深める関わり、介護保険サービス事業所との連携を行い、できる限り安心、安楽に過ごせるように支援します。
生活ケアでは、がん患者の体調や病状に合わせて介助することはもちろんですが、体力維持を図るためにも、できる限り自分でできる活動を促すことで尊厳を保てます。
家族とのつながりを深める関わりでは、訪問看護時にがん患者とその家族に関係する話題で会話を行い、コミュニケーションスキルをサポートしつつ、家族と過ごす時間の充実を図ります。
また、がん患者が家族へ手紙やビデオメッセージなどのサプライズプレゼントを用意することを手伝うこともあります。
介護保険サービス事業所との連携では、訪問看護師から積極的に電話や連絡ノートを活用し、報連相を行います。
例えば、がん患者に必要な保清、更衣などの生活ケアの介助方法の伝達、体調や表情などの介入時の様子、看護師やヘルパーの感じたことや悩みなどが挙げられます。
医療の進歩に伴い、がん患者となっても入院加療するのは短期間となり、自宅療養することになったがん患者の多くは、ショック、不安、抑うつなどの様々な精神機能低下が考えられます。
訪問看護師ががん患者の精神的負担の軽減を図ることができれば、大きなQOLの向上に貢献できます。
訪問看護師が行う精神的支援とは、傾聴による感情表現のサポートが重要になります。
傾聴では、傾聴=利用者さんの話を最後まで注意深く聞くだけでは不十分です。
訪問看護師が行う傾聴では、利用者さんの思考、そして感情について語ってもらう必要があります。
つまり、傾聴とは、①話を聞く、②利用者さんの話を掘り下げる質問をする、③利用者さんが話した出来事に対する感情をオウム返しする ①~③の作業を繰り返し行うことが傾聴になります。
利用者さんは、ただ静かに聞いてくれるよりも、自分に興味を持ってくれていること、感情を理解しようとしてくれていることで、看護師への安心感や信頼感を感じ、精神機能の向上が図れると思います。
訪問看護師が行う看取りでは、がん患者が自宅で最期を迎えたいと希望した場合、安心・安楽に過ごせるように、上記で解説した医療ケア、QOLの向上、精神的ケアを行うことはもちろんですが、アドバンス・ケア・プランニング(以下はACP)も重要になります。
ACPとは、患者が将来の治療やケアなどについて事前に考えてもらい、本人の希望や価値観に基づいた治療方針を決定することになります。
ACPでは、以下の5つを訪問看護師がサポートすることが望ましいです。
1. 希望や価値観の確認
→治療の継続や延命治療の意向、生活の質を重視するためにどのようなケアをしてもらいたいか、最期の時を誰とどのように迎えたいか、などについて話し合います。
2. 治療やケアの選択
→がん患者やその家族が理解した上で意思決定をできるように、医師と協働して予後予測や病状の進行に合わせた治療に関する情報提供を行います。
3. 代理決定者の選定
→がん患者が意思決定できなくなった時に備えて、患者の信頼がある代理決定者を話し合い、選定しておくことが望ましいです。
4.希望や意思の文書化
→がん患者の希望や治療方針に関する意思は、事前に文書でまとめておくことが望ましいです。
この文書をもとに医師や訪問看護師が治療とケアを進めやすくなります。
文書の形式には、日本尊厳死協会が作成した「リビング・ウイル~人生の最終段階における事前指示書~」というもので、3枚の書式に希望する医療処置、栄養や水分、緩和ケア、最期の過ごし方、大切にしたい事などを記入する欄があります。
下記のホームページからダウンロードができます。
リビング・ウイルとは | 公益財団法人 日本尊厳死協会 (songenshi-kyokai.or.jp)
5.定期的な見直し
→ACPは一度決めたら完了するものではなく、がん患者の状況や価値観が変わる可能性を考え、定期的に見直しを行う事が望ましいです。
訪問看護師は、普段の医療処置やケアを行っている時にもACPを念頭に入れながら会話できると良いです。
今回は、在宅療養するがん患者への訪問看護の役割について紹介しました。
今までは入院しなければできなかった点滴や注射、酸素療法、疼痛コントロールが在宅でもできるようになり、自宅療養するがん患者は年々増加しているため、訪問看護師に対する期待が高まっています。
今回紹介した医療ケア、QOLの向上、精神的支援、看取りの役割は、オーダーメイドの看護となるため、悩み、苦しむこともあると思いますが、事業所のメンバーで力を合わせて行うやりがりが強いものとなります。
やりがいを求める看護師さんは、是非、訪問看護に挑戦してみてください!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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