訪問看護師は、多様かつ設備が不十分な自宅環境でのケア、利用者さんやその家族との関係性構築などなど、様々な背景により、様々なトラブルが生じます。
多くのトラブルは事前知識があることや準備にて対応可能ですが、訪問看護未経験の看護師にとっては、働く上での不安の一つであると思います。
そこで今回は、トラブルを恐れない訪問看護師になるために知っておきたいことについて、紹介します!
トラブルを恐れない訪問看護師になるために知っておきたいことは、以下の7つになります。
1.利用者さんや家族とのコミュニケーションのトラブル
2.緊急対応時のトラブル
3.医療機器・物品のトラブル
4.感染リスクの管理
5.社用車のトラブル
6.メンタルヘルスのトラブル
7.法律・倫理に関するトラブル
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
訪問看護では、利用者さんやその家族が安心・安楽な在宅生活を送れるように医療ケアや生活ケアを行うだけでなく、利用者さんやその家族の想いや考えを聴取して、看護計画を立てる必要があります。
また、利用者さんの生活を支える医療ケアや生活ケアなどは、訪問看護師だけではなく、家族にも協力してもらう必要があるため、コミュニケーションが重要になります。
しかし、利用者さんやその家族との意思疎通がうまくいかない、家族がケアに非協力的で話を聞いてくれない、家族や利用者さんが過度に依存してくるなどのトラブルが生じることがあります。
対策は、以下の3つが挙げられます。
①初回訪問時に、訪問看護師の役割、できる事とできない事、療養生活の進め方などについて丁寧な説明をし、納得してもらう。
②利用者さんや家族の要望、考え、感情を傾聴する。
③コミュニケーションの際には、看護師として現実的な対応であり、一貫性がある態度を心がける。
④トラブルが発生する前、もしくは発生後には、利用者さんやその家族、ケアマネジャーを含めたメンバーでのケアカンファレンスを行い、お互いの理解を深める。
訪問看護師は、24時間365日、利用者さんの療養生活を支援するため、昼夜問わず、急変や状態悪化した利用者さんの対応に行かなければいけません。
緊急対応時のトラブルには、情報不足やアセスメント力不足で医師や救急隊との連絡や連携がスムーズにいかない、必要な医療器具や薬剤がその場にない、家族の意見が分かれている・パニック状態になっているなどが考えられます。
対策は、以下の3つが挙げれます。
①出先の訪問看護師が情報を確認しやすい電子カルテの活用
②緊急対応が必要になりそうな利用者さんの情報(考えられる事象と対応策)を毎日、ビジネスチャットで発信と共有する
③緊急対応時に判断に迷った時のために管理者や主任に電話連絡できるように整備する
在宅で使用している酸素濃縮器や吸引機などの医療機器は、破損や故障のトラブルが生じることがあります。
また、利用者さん側が用意する滅菌ガーゼや医療用テープ、綿棒、消毒液などが準備されていない、不足していること、医師から処方されたカテーテルや点滴セットを紛失しているなどの物品のトラブルもあります。
訪問看護師は、滅菌ガーゼやアルコール綿、使い捨て手袋などを予備として用意していますが、時には忘れてしまうことや不足していることもあります。
対策は、以下の3つが挙げれます。
①医療機器メーカーの連絡先を分かるようにしておく。
②事前に利用者さんのケアと必要物品の確認を行っておく。
③頻回に使う物品は、社用車にストックしておく。
訪問看護師は、利用者さんがインフルエンザやCOVID-19などの感染症になった時にも通常通りに訪問を行います。
介護ヘルパーやデイサービス、ショートステイの介護保険事業者の場合は、感染症となった利用者さんは対応困難となるため、訪問看護師によるケアが一時的に増加することも多々、あります。
そのため、訪問看護師は感染リスクが高いと言えます。
対策は、以下の3つが挙げれます。
①手指衛生や防護具(マスク、手袋、ガウン)、ゴミ袋などをまとめた感染対策物品セットを複数準備して、社用車に置いておく。
②利用者さんやその家族に感染予防の重要性を啓発する。
③利用者さんの病態、家族の介護力に応じて訪問だけでなく、電話対応を行う。
訪問看護師が遭遇する社用車のトラブルとその対策は、以下の4つが挙げられます。
①故障
訪問看護では、車内灯をつけて作業した後につけっぱなしにして1日放置したことによるバッテリーあがり、車のエンジンをつけたが、すぐに切ってしまい2日以上放置してしまった(駐車場での止めなおしなど)ことによるプラグかぶりなどにより、エンジンがかからないというトラブルがたまにあります。
その他では、パンク、バッテリー切れ、ブレーキやエンジンの異音が起こることが稀にあります。
対策としては、自動車保険のロードサービスの活用方法を確認しておくことになります。
多くの場合にはロードサービスにて解決できますが、念のために予備の訪問車があるとさらに安心できます。
②交通事故
訪問看護では、もらい事故に遭遇するだけでなく、事故を起こす可能性があります。
訪問看護師は、忙しさや渋滞、次の訪問へのタイムプレッシャーによる焦燥感、注意力の低下があると、他車との接触や追突、一時停止が甘いことで自転車や歩行者との追突、駐車場での物損などの交通事故を起こすと考えられます。
対策としては、事故が起きた時の行動指針(警察や管理者への電話、事故後の対応を保険会社へ引き継ぐなど)をいつでも確認できるツールで保管しておくこと、ドライブレコーダーの設置があります。
また、タイムプレッシャーを軽減するためのルート整理、遅刻時の連絡方法(事務員から電話してもらう など)、事業所の運営方法も検討するべきです。
③道路状況の問題
訪問看護は社用車で利用者さんの自宅に向かうため、渋滞やナビの誤案内による遅延、雪や雨、強風の悪天候など、道路状況の問題に遭遇することがあります。
対策としては、事前に訪問先までのルート、家の特徴や迷いやすいポイントについて申し送りを受けることになります。
道路状況により、遅延が発生してしまった場合には、安全な場所に社用車を停車させて電話連絡したり、事務員経由で利用者さんに電話連絡したもらうようにします。
④燃料不足
訪問看護あるあるとして、忙しく働いているといつの間にかガソリンが少なくなっている、しかし、そんな時に限ってガソリンスタンドが見つからないというエピソードがあります。
私は、燃料が尽きて道端で車が動かなくなってしまい、ガソリンスタンドまで燃料を買いに走って行ったことがあります。
対策としては、仕事始めか終わりに日常点検として、燃料メーターを確認することが重要になります。
慣れてきたら、週に1回、ガソリンスタンドに行くスケジュールを立てておくと安心です。
訪問看護師は、訪問先で一人で対応することで判断の責任、利用者さんやその家族との密接な関係性、車移動とタイムスケジュール管理、人員不足などにより、精神的・身体的な負担が大きくなるとバーンアウト(燃え尽き症候群)することがあります。
対策としては、最も重要なのはスタッフの急休みに対応できる程度の人員配置をしておくことですが、その他にも管理者や主任看護師との定期的な面談、気軽に報連相ができるビジネスチャットの活用、スタッフ間の関係性を良くするための会食があります。
看護師の特性として、思いやりがあって責任感や忍耐力が強いと言われており、悩みを相談すること=弱いと考えてしまう傾向があります。
自分の弱さを認めてくれる存在が仲間であるため、職場のスタッフには気兼ねなく相談できるといいですね!
訪問看護師の仕事特性上、利用者さんやその家族の個人情報を知ってしまったり、身近な医療者として利用者さんやその家族から医療に関する相談を多く受けます。
そのため、知りえた情報の管理と看護師の質問に対する返答によって、法律・倫理の問題へ発展することがあります。
例えば、利用者さんはつい気を許して看護師にプライベートな情報を話してしまうことは多々ありますが、この情報を他の利用者さんに共有してしまったことが発覚してしまった場合、看護師法の守秘義務違反、個人情報保護法違反、刑法134条(秘密漏洩罪)、民法(不法行為責任)に該当する可能性があります。
また、利用者さんに症状の原因や治癒期間について質問があり、看護師は明確な判断をしたが、実際にはその通りにならなず、時間がかかった、もしくは治癒しなかった場合、利用者さんやその家族が看護師を訴えてしまうと、医師法17条「医師でない者が、医業を行うことを禁じる」に抵触する可能性があります。
つまり、訪問看護師は、診断や診断、病理、予後予測について、基本的には医師から情報提供してもらった内容を利用者さんやその家族に繰り返し伝える、もしくは、医学的な知識として伝え、利用者さんの状態については医師に確認する旨を伝えることが望ましいです。
一般的に医師法17条に抵触する発言の例について紹介します。
①診断に関する発言
「あなたの症状は〇〇病です。」
→診断行為は医師の専権業務であり、病名を伝えることは違法になる可能性あり。
「レントゲンを見た感じ、骨折しているみたいですね。」
→画像診断を行い、所見を述べる行為は医師にのみ許されている。
②治療に関する発言
「この薬を飲んでください。よく効きますよ。」
→医師が処方した以外の薬に対して使用指示を行うことはグレー。
「次回は点滴をしましょう。」
→治療方法の決定も医師の権限。
③症状や状態に対する明確な判断
「この痛みは〇〇が原因です。」
→症状の原因特定は診断にあたる場合がある。
「治るまでに〇週間くらいかかりますよ。」
→治癒期間の予測や疾患の予後予測も診断行為とみなされる。
④医療行為の代替提案
「医者に行かなくても、これで十分治りますよ。」
→医師の受診を阻害する可能性のある発言は問題視される場合あり。
上記までの内容を頭の片隅に入れておくことが、対策になります(笑)。
訪問看護師としてトラブルを恐れないためには、事前の準備や冷静な対応、法的リスクへの備え、そして自身のメンタルケアが重要です。
また、訪問車を使用する際の注意点や学び続ける姿勢を持つことで、どんな状況にも対応できる力を身につけることができます。
トラブルを恐れず、自信を持って現場に臨める訪問看護師を目指していきましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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