訪問看護ステーションには、様々な要因や背景で褥瘡を発生した利用者さんが多くいます。
訪問看護に褥瘡ケアの依頼が来た時には、すでに重症となっているケースも多々あります。
現在は、在宅でも治癒に向けたケアや悪化を防ぐケアは可能になっています。
今回はアスエイドの褥瘡ケアへの取り組みについて紹介します。
褥瘡ケアを行うためには、看護師が正しい知識と技術を持っていることが重要です。
アスエイドでは、皮膚排泄ケア認定看護師に講師をお願いし、褥瘡ケアの勉強会を行いました。
今回講師には、上尾中央総合病院で皮膚・排泄ケア認定看護師としてご活躍中の渡貫佳恵看護師さんをお招きして主に褥瘡ケアについての講義を行っていただきました。
※専門的な熟練した看護技術と知識の普及を図ることを目的とした埼玉県看護協会の取り組み「認定看護師派遣事業」を活用しました。
そこで得た学びを中心に、訪問看護師が行う褥瘡ケアのポイントについて紹介します。
褥瘡ケアのポイントは、5つになります。
1.いつから、どこに、どんな形で、どんな色をしているのか確認する
2.褥瘡の色調変化でどの段階にあてはまるのか確認する
3.原因を取り除くためのケア方法を考える
4.局所の処置の他、悪化予防対策も同時に行う
5.多職種連携
それぞれについて、以下で解説します。
まず皮膚の変化に気づいたら発生した時期や部位を確認します。
座っている時間が長い、横になっている時間が長い、右向きで寝ていることが多いなど生活状況を確認することで発生した背景がわかります。
また褥瘡の色を見ることで褥瘡のステージが分かり治療やケアの方向性が決まります。
褥瘡は色調により、1)黒色・黄色期、2)赤色期、3)白色期の3つに分類されます。
そのため、褥瘡がどの時期にあるか、どのような治療やケアが必要かが決まります。
時期に合わせたケアのポイントをまとめました。
①壊死組織の除去
壊死組織は血流が途絶えた状態であり、筋収縮や上皮化を阻害してしまいます。
そのためデブリードマンを行い、感染と浸出液のコントロールを図ります。
デブリードマンには主に外科的・物理的・科学的・自己融解的なものがあります。
外科的デブリードマンはメスや剪刀で直接除去する方法です。
物理的デブリードマンは洗浄やwet To Dry法と呼ばれるものがあります。
科学的デブリードマンは蛋白分解酵素含む外用薬を使用して融解を促す方法です。
自己融解的デブリードマンはハイドロコロイドドレッシング材を使用して融解を促す方法です。
②感染・炎症の鎮静化
壊死組織は細菌増殖の温床になりやすく、感染リスクを高めます。
褥瘡部に感染が起こると創部の悪化を引き起こし、炎症状態が続くことで良好な肉芽形成がされません。
また感染が悪化して全身に及ぶと全身状態の悪化も引き起こします。
まずは感染の予防が重要であることがわかります。
③湿潤のバランスを整える
創部から染み出す浸出液には創傷治癒に関わるタンパク質・サイトカインが含まれています。
創部にとって適度な湿潤環境は創傷治癒が促進されます。
しかしながら浸出液が多すぎたり少なすぎる創は治癒が阻害され、正常な上皮形成が阻害されてしまいます。
適切な被覆材・外用薬の選択・ポケットを切開するなどして浸出液の量をコントロールしていく必要があります。
湿潤環境療法
「黒色期・黄色期」のケアのポイントでも挙げたように赤色期でも適度な湿潤環境にすることで、創面に肉芽・上皮が形成しやすいよう環境を整える必要があります。
目的により治療・処置方法が決まります。
肉芽形成促進には・・外用療法(軟膏やスプレー剤)、局所陰圧閉鎖療法
上皮形成促進、創閉鎖には・・外用療法、創傷被覆材、手術療法
創傷被覆材とは「湿潤環境を維持して、創傷治癒に最適な環境を提供する医療材料」のことを指します。
湿潤環境を保ち、外力からの保護やクッション性のある素材では疼痛の緩和にもつながります。
創傷被覆材にはポリウレタンフィルム、ハイドロコロイド製材、ポリウレタンフォームなどがあります。
白色期は「成熟瘢痕期」と呼ばれ、上皮化が進み肉芽組織も成熟する時期です。
瘢痕や治癒後の皮膚はもとの皮膚に比べて脆弱な状態となっています。
そのため褥瘡が再発しないように外力を避けたり保湿を継続的に行っていく必要があります。
褥瘡が発生する要因は様々なものがあり、主なものとして同一部位の圧迫、摩擦やズレ、皮膚の脆弱さ(排泄物などによる湿潤、乾燥、浮腫など)、栄養状態の低下などがあります。
それらの要因を取り除く方法を考えていきます。
例えば、圧迫を避けるために褥瘡予防マットレスや車椅子用の除圧クッションなどを取り入れるのも良いでしょう。
車椅子に座る時間が長い方は時間ごとに座り直すのも大切です。
タイマーをかけて時間を設定するのも忘れないために有効です。
ベッド上で体の位置を直すときにどうしても摩擦が起こってしまいます。
その場合、45リットルのビニール袋を体とマットレスの間に挟んで位置を直すと摩擦が少なく済みます。
臀部や仙骨部の褥瘡では排泄物による皮膚のバリア機能低下や湿潤によって褥瘡ができやすい状態になります。
日々の清潔ケアや撥水効果のあるクリームの使用も効果的です。
逆に乾燥している皮膚は傷がつきやすく、保湿クリームでの保護が予防に有効です。
全身状態の低下や栄養状態の低下も大きな要因となります。
まずはきちんと基礎疾患の治療を継続することが大切です。
様々な理由で食事摂取量が少なくなり栄養状態が低下してきた際には、摂取しやすい食事の検討や状態に合わせた栄養補助食品の活用も良いでしょう。
褥瘡の処置を継続していくなかで悪化させないようにケアを行うことが大切です。
まずは急性期や浅い褥瘡を見逃さないことです。
出来始めの褥瘡をそのままにしておくと1~2週間経過すると深い褥瘡に進展してしまいます。
次に褥瘡部の炎症や感染を起こさないこと、悪化させないことです。
炎症や感染があると良好な肉芽組織が形成されません。
また感染が全身に及ぶと敗血症や菌血症を引き起こします。
洗浄や適切な外用薬の使用で悪化を防いでいきます。
在宅での褥瘡ケアには他職種との連携も重要になってきます。
創部の状態や栄養状態、全身状態などを観察して主治医へ報告します。
主治医からは血液データの情報を共有してもらったり、処置の指示をもらいます。
また介護保険サービスを利用している方はケアマネージャーを初めとして、ヘルパーやデイサービス、ショートステイ先のスタッフとも情報共有を図りながら統一したケアを提供していきます。
日々の介護を担っているご家族にも指導を行うことがあります。
ご家族でも実施可能なケアを検討していき、褥瘡を悪化させないようにしていきます。
アスエイドではスタッフ間で情報共有やケースカンファレンス、勉強会を通して個別のケースに合ったケアを提案して実践していきます。
今回は、訪問看護師が行う褥瘡ケアのポイントについて紹介しました。
褥瘡ケアのポイントは、在宅においても病院と変わらず、創部の評価に基づいた処置、ケアを提供しながら、予防を行っていくことが重要です。
合わせて、在宅ならではのポイントとしては、多職種で連携しながら褥瘡ケアを行っていくことになります。
訪問看護では、軽度から重度までの褥瘡ケアを行っています。
軽度の褥瘡であれば、在宅でも長期間を要さずに治すことができます。
日頃の訪問看護時に、「ここがいつも赤くなっている」「皮膚がむけてしまって浸出液が出てくる」など皮膚の変化が見られた場合は褥瘡の兆候かもしれません。
訪問看護ステーション アスエイドでは、褥瘡の早期発見、早期介入できるように、様々な看護師が一人の利用者さんに関わり、日々、相談しながら訪問看護を行っています。