突然ですが、私は食べることが大好きです。
アスエイドのスタッフもみんな美味しいものが大好きです。
当たり前のことですが人は栄養や水分を摂取しながら生きています。
生命維持のためには欠かせない行為です。
一方で「食事を摂る」ということは他者との時間の共有であったり、楽しいコミュニケーションの場でもあります。
しかし加齢や病気による影響で安全に食事を摂取することが難しくなることがあります。
食べる事が難しくなると必要な栄養が摂れなくなり体調を崩してしまったり、食事や水分がうまく飲み込めずに誤嚥性肺炎を起こしてしまうかもしれません。
また、楽しみがなくなってしまったように感じる方もいるかもしれません。
訪問看護にとって摂食嚥下障害へのケアは、利用者さんやその家族に寄り添いためにも重要です。
先日、アスエイドの勉強会として、新座志木中央総合病院で摂食嚥下認定看護師としてご活躍中の清水奈美先生を講師として招き、在宅でも安全に食事が摂取できるために看護師ができる事をテーマに講義してもらいました。
勉強会の内容をもとに、訪問看護が行う摂食嚥下障害のケアについて紹介します。
訪問看護が行う摂食嚥下障害のケアは、以下の4つになります。
1.嚥下障害の症状チェック
2.安全に食べるための工夫
3.誤嚥、窒息時の対応方法
4.在宅でできる嚥下訓練
それぞれについて、詳しく解説します。
ご自身や介護しているご家族のなかに「最近お茶を飲むときにムセる」「口の中に食べ物が残ってしまう」など、食べにくさや飲み込みにくさを感じることはありませんか?
まずは嚥下障害があるのかどうかをチェックしてみましょう。
(1)パタカラテスト
よく嚥下訓練(口腔体操)の一環で「パタカラ体操」を行います。
これはそれぞれの発声が口唇や舌、喉を使用して発するもので摂食・嚥下に必要な動作になっています。
各発声を聞いてみるとどの部分で嚥下障害が生じているか評価ができます。
「パ」行 口唇を閉鎖させ破裂させて出す音⇒口からこぼれる
「タ」「ラ」行 舌が歯茎部に接着する音⇒食物を奥へ送り込むことが苦手、困難
「カ」行 舌背が軟口蓋へ接着する音⇒口腔内に食物を保持できない
上記のほかに「声の質」「声の長さ」「共鳴」のチェックもします。
「声の質」
ガラガラ声⇒声門の近くに貯留物があり咽頭に入りやすい
かすれ声⇒声門が閉じにくいため窒息の危険性がある
「声の長さ」
声が続かない⇒呼吸の力が弱くなっておりムセた場合など喀出が不十分になっている 可能性がある
「共鳴」
鼻にかかった声⇒鼻腔へ逆流している可能性がある
一音ずつ言えても連続して発声することが難しい場合もあるため「パタカラ」と連続で発声をしてみるのも大切です。
認知機能が低下している方など「パタカラ」がうまく言えない方には「パンダのたからもの」で試してみてください。
なんだか呪文のように聞こえますが、同じ音で構成されていますので言葉に出しやすいかもしれません。
(2)症状チェック
当てはまる項目はありませんでしたか?
チェックがついた方はもしかしたら嚥下障害が起こっている可能性があります。
〈椅子での姿勢〉
背筋を伸ばして軽く前かがみになるように
テーブルの高さは腕をのせて肘が90度に曲がる程度にする
※円背の方は椅子をリクライニング位にすると良いポジショニングがとれます。
浅めに座って背中にクッションを入れるなどしてその方に合わせた姿勢を工夫してみましょう。
〈ベッド上座位の姿勢〉
腕がオーバーテーブルに乗せられるようにクッションなどを腕・肘の下に入れてサポートする
頸部が後屈している方は首とベッドの間に隙間ができないように枕などで調整する
足底にもクッションや布団などを入れてサポートする
嚥下障害の原因や程度によって摂取しにくい食品、しやすい食品があります。
ここでは一般的な種類についてご紹介します。
飲み込みにくい食べ物
・さらさらした液体状のもの(水、お茶、ジュースなど)
・ぱさぱさしたもの(パン、ふかし芋、ゆで卵、焼き魚、きな粉など)
・パラパラとまとまりにくいもの(刻んだおかず、そぼろ、焼き魚、炒飯など)
・口の中に張り付くもの(餅、焼き海苔、わかめ、キュウリなど)
・水分と固形に分かれるもの(スイカなど水分が多い果物、大根おろし、高野豆腐など)
・酸っぱいもの(酢の物、柑橘類など)
・弾力があり噛み切りにくいもの(ステーキなどの肉類、いか、たこ、かまぼこ、こんにゃくなど)
・繊維の強いもの(青菜類、ゴボウ、たけのこ、もやしなど)
飲み込みやすい食べ物
・ムースのように密度が均一なもの
・適当な粘度があり、口の中でバラバラになりにくいもの
・口の中や喉を通過するときに変形(飲み込みやすい形)しやすいもの
・べたつかず、粘膜にくっつきにくいもの
難しそうですが、飲み込みやすく食べやすい食事にするためのポイントを押さえることで、簡単に調理や準備をすることができます。
前述のポイントを踏まえて、食べやすい食事を作るときのポイントをいくつかご紹介します。
①サラサラした水分にはとろみをつける
とろみをつけるための製品がドラッグストアやインターネットで購入することができます。
とろみをつけることでまとまり、流れるスピードも遅くなるため、飲み込むタイミングが取りやすくなります。
とろみの付け具合は嚥下障害の程度によって調整します。
②とろみをつけてばらけるのを防ぐ
水分だけでなく、食事にとろみをつけることで口のなかでばらけるのを防ぎ、まとまりやすくなり飲み込みやすくなります。
例えば・・焼き魚を「魚のあんかけ風」にしたり、チャーハンを「あんかけチャーハン」にしてみてはどうでしょう?
③油脂などでまとまりやすくする
マヨネーズをつなぎに使用したり混ぜ込むことで滑らかにまとまります。
例えば・・ゆで卵を崩してマヨネーズを加え「卵サラダ」に、粉ふき芋はマッシュして「ポテトサラダ風」に☆
④加熱調理してやわらかくする
やわらかく調理すると嚙み砕きやすくなり、食べ物を丸呑みを防ぐことができます。
例えば・・野菜など小さくカットして柔らかく煮込む(圧力鍋やレンジ調理器を活用すると便利です)
レシピ検索サイトや介護食品のメーカーホームページでも詳しいレシピを紹介しています!
もしご自宅でムセてしまったり食事が詰まってしまうことがあるかもしれません。
その場合の対応方法を以下に挙げます。
「ムセる」とは気管に入ったもの、入りかけたものを出す反応です。
そのため前かがみになりしっかり咳をして出し切ることが大切です。
背中をさすって咳を鎮めてはいけません。
「腹部突き上げ放(ハイムリック法)」
①背部から対象者の腹部に手を回す
②片手で握り拳を造り、対象者のみぞおちの下部分に当てる
③もう片方の手で握り拳をつかみ、手前上方に向かって圧迫するように何度か突き上げる
「背部叩打法」
①対象者を自分の方に向けて横向けにし、片手で顔を支える
(立っている場合は後ろから対象者の顎を支えてうつむかせる)
②手の付け根で肩甲骨の間を強く何度も連続して叩く
③口の中を見て、異物が出てきたら取り除く
安全に食べるために、ご自宅で出来る嚥下訓練をいくつかご紹介します。
食事前に実施したり、ご家族と一緒に行ってみると続けやすいと思います。
棒つきの飴を舐める!・・舌の動きが良くなり、唾液の分泌も良くなることがあります
吹き戻し「ピロピロ」、コップの水をストローで吹く!・・駄菓子屋さんで見かけるおもちゃで私は「ピロピロ」と呼んでいますが、それを吹いて戻してを体操として行います。
またピロピロがなくてもコップに水を入れてストローで繰り返し吹く動作を行います。
この方法で喉の筋力アップが期待できます。
他にもスルメを噛む、唾液腺をマッサージする等、特別なものがなくてもご自宅でできることはたくさんあります。
今回は、訪問看護が行う摂食嚥下障害のケアについて紹介しました。
できるだけ「食べたい」というご利用者様の希望が叶えられるように、訪問看護師は、症状チェック、食形態や食事姿勢、介助指導、誤嚥時の対応などを行っていきます。
また、訪問看護師だけでなくリハビリ職とも連携し、様々な角度から評価しながら、ケアを進めていきます。
訪問看護ステーション アスエイドでは、スタッフ間が腹を割って話せる関係性をモットーに困ったらすぐに相談する、一人で悩まない職場づくりを行っています。
初めての訪問看護で自信がないという看護師さんでも、是非、アスエイドで一緒に働いてほしいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
気軽に、就職相談、見学などのお問合せ、お待ちしてます!