「心不全」と聞くととても難しい印象を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
確かに病状によっては食事制限や毎日の服薬、生活するうえで気を付けなければいけない事もあります。
正しい知識を持ち、適切な対処や生活を送ることで悪化を予防してうまく付き合っていくことが大切です。
2月に開催した心不全看護の勉強会では埼玉県立循環器・呼吸器病センター 慢性心不全看護認定看護師の笠井美穂先生を講師としてお招きし、在宅での心不全看護について講義をしていただきました。
今回は、訪問看護が行う心不全看護のポイントを紹介します。
一般向けには「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」とされています。
心不全のケアを行う際には原因や症状について理解しておくことが大切です。
原因となる疾患は様々で、以下に一例を載せました。
(急性・慢性心不全診療ガイドラインより一部抜粋)
心不全は進行性の病態であり4つのステージに分けられます。
ステージによって体の変化や治療の目標も変わります。
「心不全とそのリスクの進展ステージ」
(急性・慢性心不全診療ガイドラインより)
心不全症状の中心は「心拍出量の低下」と「うっ血」の二つから起こります。
「心拍出量の低下」とは全身に十分に酸素や栄養が行き渡らない状態をいいます。
疲労感・倦怠感・活動性の低下・食欲の低下が見られることがあります。
また尿量の減少・腹部膨満感・認知症の進行なども見られ、心不全症状が進行している場合や重症化した患者さんに多く見られます。
「うっ血」の場合は血液の流れが悪くなり、肺や体静脈の血液がうっ滞してしまうことを言います。
肺のうっ血の場合は息切れや呼吸困難が見られます。
体静脈のうっ血では体重増加・下腿の浮腫・食欲低下・腹部膨満感があり、急激に悪くなっている患者さんに多く見られます。
認知症の方が心不全を抱えているケースも増えています。
認知症の方は自分の体調や思いをうまく人に伝えられないことがあります。
そのため自覚症状を自分から訴えられないこともあり、より目に見える身体の変化(呼吸困難や息切れなど)や発語、身支度、移動がままならなくなるなどの様子に注意が必要です。
その人なりの身体の不調を表すようになるため周囲の人が気付けるようにしましょう。
訪問看護で行う心不全看護のポイントは3つあります。
1.心不全を悪化させない
2.その人に合わせた生活指導
3.浮腫へのケア
この3点について詳しく解説していきます。
まずは心不全の原因や病態、症状を理解できるように分かりやすく説明していくことが大切です。
患者さんの理解が難しい場合は、そのご家族や介護者の方へ指導することもあります。
心不全の再発・増悪を防ぐための自己管理方法(塩分、内服、生活行動)について指導を行い、実際に管理ができるように関わります。
もし病状が悪化してきたときには早めに受診ができるように促していくことも重要です。
訪問看護では患者さんのご自宅へ伺いケアを行います。
そのため住んでいる環境や生活状況、サポートしてくれる方も様々です。
治療の内容も異なるため指導の方法もその方によって変わってきます。
まずは患者さんがどのくらい病気について理解しているかを把握します。
治療内容や症状を確認したうえで注意しなければいけないポイントを見つけます。
いくつも課題がある場合は優先すべき点に絞って、一つずつ指導を行います。
特に治療の要となる内服治療や水分・塩分制限は大事なポイントになってきます。
内服薬が適切に飲めていない場合はその理由を明らかにします。
飲み忘れてしまっているのか、副作用や飲み心地が悪く飲めていない可能性もあります。
管理方法を一緒に考えたり、必要に応じて主治医や薬剤師とも相談しながら内服治療が継続できるように関わります。
水分制限は軽症心不全では厳しくなくて良いと言われています。
しかしそう言って飲みすぎてしまうと症状が悪化してしまいます。
なるべくいつも同じコップで飲んでいただくようにし、そのコップの容量もあらかじめ計測しておくと摂取量が把握しやすいです。
内服薬が多い人は内服のたびに多めに水分を摂取してしまいます。
その場合はお薬ゼリーを使用すると水分量を抑えることができます。
次に塩分制限についてです。
日本人の食事はご飯や麺類が多いですね。
これらを食べるときには塩気がないと食べにくい気がします。
塩分を制限するとなると「どうやってやればいいかわからない」という声もよく聞きます。
また塩分を制限することで食事摂取量が低下したり、ストレスにつながることもあります。
最近ではスーパーなどでも減塩商品が数多く出ていますが、それらは価格もやや割高となっており、継続して購入することが難しい場合もあります。
どのような食事なら指示された塩分量となるかを一緒に確認してみるのもいいかもしれません。
なるべく守れるような方法を一緒に考えていきますが、どうしても難しい場合は主治医とも情報共有して急性増悪にならないようにしていきます。
心不全の症状では浮腫(むくみ)が見られることがあります。
浮腫が生じている部位は皮膚が薄くなっており、傷を作りやすく皮脂の分泌や水分を留めておく力が弱くなっており丁寧なケアが必要となってきます。
まずは低刺激・弱酸性の洗浄剤を使用して(なるべく皮膚のphに近いもの)洗浄します。
この時、泡で優しく包み込むように洗浄します。
ぬるま湯でよく洗い流し、軽く押さえるように拭き取りましょう。
洗浄後は低刺激の保湿剤を使用して乾燥を防ぎます。
皮膚を傷つけないように爪を短く整えておきましょう。
身に着ける衣類は柔らかく肌触りの良い伸縮性のある素材を選びましょう。
靴や靴下などはきつくないものを選びましょう。
浮腫は体の低い部位(下腿、脛骨の前面、足背、踵部)に生じやすく、夕方にかけて出現することが多いです。
また立っていると下腿に、横になっていると背部や腰部に出現しやすく体位によって浮腫の部位が移動することがあります。
下肢の浮腫を軽減させるために下肢を挙上させたりしますが、心不全の方の場合は急な血液の戻りによって心臓へ負担がかかることがあります。
どの程度の挙上なら許容範囲かは人によっても異なるため、主治医の先生へ確認してみると良いでしょう。
今回は、訪問看護が行う心不全看護のポイントについて紹介しました。
心不全看護のポイントは、悪化予防のための症状や服薬状況を確認しつつ、生活指導と浮腫のケアを行う事になります。
埼玉県立循環器・呼吸器病センター 慢性心不全看護認定看護師の笠井美穂先生から、心不全に関する知識と適切な対処、予防について講義していただいたことで、アスエイドのスタッフもパワーアップすることができました。
訪問看護ステーション アスエイドでは、スタッフ間が腹を割って話せる関係性をモットーに困ったらすぐに相談する、一人で悩まない職場づくりを行っています。
合わせて、事業所内に認定看護師を講師として招き、勉強会も行っています。
この勉強会では、近隣の訪問診療の医師と看護師、ケアマネジャーも参加しており、講義だけでなく、様々な意見交換が行えています。
また、事業所の勉強会を開催した際には、ブログで報告させてもらいます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
訪問看護に少しでも興味を持ってくれた看護師さんは、是非、アスエイドで一緒に働いてほしいと思います!
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