訪問看護師として働き、日々の業務に慣れてくると「もっと専門的に利用者さんをケアしたい」、「管理業務を行いたい」などスキルアップについて考える看護師さんは多いと思います。
そこで今回は、スキルアップしたい訪問看護師が学ぶべき知識と技術について紹介します。
スキルアップしたい訪問看護師が学ぶべき知識と技術は、以下の8つが挙げられます。
1.慢性疾患の管理
2.終末期ケア
3.感染症管理
4.褥瘡ケア
5.呼吸療法
6.認知症ケア
7.マネジメント
8.生活動作の介助
それぞれについて、以下で解説します。
慢性疾患は長期間にわたって進行し、治癒することが稀な病気であるため、訪問看護師が支援する機会が多いです。
慢性疾患は以下の病気が含まれます。
心血管系疾患・・・高血圧、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全、心房細動、末梢動脈疾患
呼吸器系疾患・・・慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、肺線維症
内分泌・代謝疾患・・・糖尿病、甲状腺疾患(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)、高脂血症(高コレステロール血症)、メタボリックシンドローム
消化器系疾患・・・慢性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)、肝硬変、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、慢性膵炎
腎臓病・・・慢性腎臓病(CKD)、腎不全
神経系疾患・・・筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、大脳基底核変性症、進行性核上性麻痺、脊髄小脳変性症、アルツハイマー病
筋骨格系疾患・・・骨粗鬆症、変形性関節症、関節リウマチ
皮膚疾患・・・乾癬、アトピー性皮膚炎、苔癬(たいせん)
精神疾患・・・うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害
眼疾患・・・緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性
自己免疫疾患・・・全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群
その他・・・肥満、腰痛(慢性疼痛症候群)、フレイル
慢性疾患は、病名を聞いて何となく病態が分かる程度の知識を持っているだけでも優秀な訪問看護師となれると思います。
また、働いている訪問看護ステーションでよく聞く慢性疾患について病態だけでなく、最新の治療やケアについて学ぶこともスキルアップに繋がります。
終末期ケアでは、治癒が難しい疾患を持つ利用者さんに対して、疼痛や呼吸困難、倦怠感などの身体ケア、カウンセリングやアドバイスなどの心理的ケア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)などを行い、可能な限り快適に過ごせるように支援を行います。
厚生労働省の調査(2020年)によると訪問看護ステーションの利用者さんの15~20%が終末期ケアを受けていると言われています。
高齢化社会の進行とともに在宅での見取りを希望する高齢者が増えているため、今後はもっともっと終末期ケアの需要が高まると思います。
終末期ケアについて専門的な知識を学ぶことは、利用者さんに寄り添う訪問看護師を目指す上で有効なスキルアップになります。
感染症管理では、利用者さんやその家族を感染症から守り、在宅医療の安全性を高めるように支援します。
訪問看護師は、高齢者に多いCOVID-19、インフルエンザ、ノロウイルス感染症などに対して、予防と発生時の対応について知識と技術が求められます。
感染症発生時には、人と人の接触を最小限に抑えるための隔離措置が必要ですが、在宅環境かつ介助が必要な利用者さんがいるなど、それぞれの利用者さんによって異なります。
そんな訪問看護では、感染症管理に関する専門的な知識があることで、状況に応じた対応ができると思います。
また、訪問看護ステーションは、感染症対策マニュアルを作成、運用し、定期的な更新を行う必要があるため、スキルアップとして感染症管理を学ぶことは、利用者さんやその家族だけでなく、ステーションで働くスタッフを守ることにも繋がります。
訪問看護の利用者さんの多くは、オムツ着用でベッド上で過ごす時間が長い、食事や水分量が少ない、身体機能が低下しており、体動が少ないなどの理由により、褥瘡発生のリスクが高いです。
そのため、訪問看護師が褥瘡ケアを行い機会も多くなります。
褥瘡ケアには、予防と評価、治療、教育と多岐に渡るため、専門的な知識と技術を学ぶことはスキルアップとして有効になります。
褥瘡ケアについて詳しく知りたい方は、以下のブログも読んでほしいです。
訪問看護が行う褥瘡ケアの実際 – 訪問看護ステーション | アスエイド (asaid.net)
呼吸療法では、呼吸器の障害を持つ利用者さんに対して酸素療法や排痰、吸引、ネブライザーなどを行い、呼吸機能の維持、改善を支援します。
また、呼吸補助装置(CPAP、BiPAP)の管理、利用者さん自身でできる胸郭のストレッチ、インセンティブスパイロメトリー(呼吸練習器)を使用した呼気筋の強化、利用者さんや家族への教育を行います。
訪問看護における呼吸器の障害を持つ利用者さんは、以下の疾患が多いです。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・間質性肺炎
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)による呼吸不全
・呼吸器感染症(肺炎、膿胸、新型コロナウィルス感染症など)
・開胸開腹手術の前後(肺癌、消化器癌など)
呼吸療法は、呼吸の解剖生理、呼吸器疾患の病態、看護ケアだけでなく、触診解剖を基にしたリハビリテーションについても学ぶことができるため、訪問看護師として有効なスキルアップになります。
厚生労働省によると、2025年には認知症となる人が700万人を超えると言われています。
そのため、認知症への知識とケアの実践は、全ての看護師が関わる問題として考えられています。
今現在でも、認知症を抱えながら地域で暮らしている方が増えており、訪問看護師が認知症の方やそのご家族の支援を行う機会が多くなっています。
認知症ケアは、状態観察、日常生活の援助、困り事の解決、身体面・認知面の治療の継続、リハビリテーション、家族支援、意思決定支援と多岐に渡るだけでなく、認知症症状なのか、本人の特性なのかを評価するために専門的な知識とコミュニケーション能力が必要になります。
認知症の利用者さんを介助しながら生活する家族や介助者は、身体的、精神的に辛いと感じることが多いです。
認知症の利用者さんが持てる能力を発揮できるようにサポートする訪問看護師は、誰からも感謝される、頼られる存在になれると思います。
訪問看護では、時間管理、スタッフのコーディネーションなどのマネジメントができることで、管理者や主任としてキャリアアップが期待できます。
時間管理では、利用者さんの住所をもとに移動時間の算出とルート作成、代行や同行の調整だけでなく、カンファレンス、営業活動、マニュアル作成、雑談などの日々の業務以外の事に使う時間についても確保、調整することが求められます。
スタッフのコーディネーションでは、看護師がチームとして調和しているのか、看護師が活き活きと働けているのか、報連相がスムーズにできているのか、息抜きができているのか、悩みがないのかなどなど、円滑にスタッフが働けるように観察、評価、行動することが求められます。
利用者さんとその家族が自宅で安心、安楽に過ごすためには、病状の安定と同程度で、家族の介助量の大きさが重要になると思います。
訪問看護では、陰部洗浄、更衣、トイレでの排泄、入浴、歩行、床上動作などの生活動作の介助を行います。
最も訪問看護師が苦戦する介助では、入浴時の浴槽からの立ち上がり、自宅内での歩行、転倒時の床からの立ち上がりであると思います。
訪問看護師が利用者さんの身体機能に合わせた安全かつ、最小の介助量で苦戦することなく、生活動作の介助ができれば、残存機能の維持、向上による自立支援、家族の身体的負担感を提供できます。
生活動作の介助は、動作分析力と身体機能(残存機能)の評価をもとにしたリハビリ部門の知識や技術について学ぶことができるため、訪問看護師として有効なスキルアップになります。
今回は、スキルアップしたい訪問看護師が学ぶべき知識と技術について紹介しました。
訪問看護では、様々な疾患、病態、心身機能、生活環境の利用者さんのケアを行うため、ジェネラリスト的な側面がありますが、訪問看護師自身が得意(好き)と思える知識や技術を習得し、スキルアップすることは、ステーションの強みになるだけでなく、やりがいや楽しみを高められると思います。
今回、紹介した知識や技術は、現在から将来にかけて必要とさせるスキルであるため、是非、学んでみてほしいと思います。
しかし、一人で黙々と勉強(インプット)していても、誰かに話す、現場で実践する(アウトプット)することがなければほとんどの知識や技術は記憶されません。
そのため、ざっくばらんに話せる環境がある訪問看護ステーションで働き、”あなた”らしく、楽しくスキルアップしてほしいです。
訪問看護ステーション アスエイドでは、スタッフ間が腹を割って話せる関係性をモットーに困ったらすぐに相談する、一人で悩まない職場づくりを行っています。
初めての訪問看護で自信がないという看護師さん、訪問看護経験者でスキルアップしたい看護師さんは、是非、アスエイドで一緒に働いてほしいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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