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訪問看護における救急対応、医師への報告のポイント

2025年2月18日

訪問看護では病院とは異なり持ち合わせている物品が限られていること、看護師が自分ひとりの場合が多く、現場での判断が求められるため、不安を強く感じる看護師が多いと思います。

この不安を軽減させるためには、急変時の観察の視点や初動対応の方法を理解し、現場での対応力を向上させることが大事になります。

そもそも急変とは「予測を超えた状態の変化」であり、病状の変化が突発的で症状の変化が進行性です。

そのため、急変の放置や対処の遅延が生命に危険を及ぼす可能性があります。

実は訪問看護師が遭遇する場面では、急変に至る前の状態であることが多いです。

「なんとなく普段と様子が違う」「バイタルサインはそんなに悪くないけど」といったこと、経験ありませんか?

それはもしかしたら急変前の前兆かもしれません。

特に、高齢者は様々な疾患を抱えている方も多く、それらが関連して別の疾患を発症してしまうこともあるため、緊急時の判断や医師への報告の仕方は、利用者の安全を守る上で非常に重要です。

訪問看護ステーション アスエイドでは、救急看護認定看護師の藤井美香さんを講師として招き、勉強会を開催しました。

そこで今回は、勉強会で得られた知見から、訪問看護における救急対応と医師への報告のポイントを紹介します。

訪問看護における救急対応

訪問看護における救急対応では、下記の4つがポイントになります。

1.利用者さんの状態確認

2.応急処置

3.家族への連絡

4.医師への報告準備

それぞれについて、詳しく解説します。

1.利用者さんの状態確認

訪問看護師が利用者さんの状態確認を行う際には、迅速評価と一時評価を適切に行う事が重要です。

迅速評価では、生命を脅かす状態かどうかをパッと見て評価した後に、ABCDEアプローチに沿って『なんか変』に結びつく兆候を評価していきます。

『パット見て2~3秒で判断』 
訪問看護師が来訪し、利用者さんを見た瞬間に意識や呼吸、循環について、いつもとは違うと感じた場合には、急変である可能性があります。

・意識:外観、反応低下

・呼吸:努力呼吸、頻呼吸

・循環:蒼白、冷汗

上記のような所見があった場合には、ABCDEアプローチを念頭に入れてアセスメントを進めます。    

『ABCDEアプローチ』 
「気道→呼吸→循環→意識→全身評価」の順に評価し、生命にかかわる異常があれば即対応が求められる。

A(Airway:気道) 
気道の開通の有無→異物や嘔吐物、舌根沈下はないか?

B(Breathing:呼吸)
呼吸努力の有無→胸郭の動き、呼吸音、酸素飽和度(spO²)は?

C(Circulation:循環) 
ショック兆候の有無→皮膚の色、冷感、毛細血管再充満時間(CRT)、血圧と脈拍の異常はないか?

D(Disability:意識) 
生命に関わる中枢神経の有無→意識レベルは?、瞳孔の反応は?

E(Exposure:全身評価)
→皮膚の発疹・出血は?、外傷・骨折の有無は?体温は正常か?

体調が変化してから急変までには段階的な変化が生じます。

その変化を捉えることで緊急度の把握や次の対応行動へ結びついていきます。

2.応急処置

A(Airway:気道)への応急処置

急変でしばしば起こるのが「窒息」です。

嚥下状態が低下している高齢者ではリスクを抱えています。

窒息は緊急事態ですが、慌てずに対応することが求められます。

【窒息の解除の方法】ハイムリック法

1.「今からあなたを助けます」と伝える。

このアクションがあることで相手が落ち着いて処置を受けられます。

2.1のあとに背後に回ります。

3.圧迫位置は、お臍のやや上方(みぞおちの下方)でその位置に親指側を向けて、握りこぶしを当てます。

※剣状突起や胸骨の真下を圧迫しないように注意!

4.当てた握りこぶしを上から包むように、もう一方の手でしっかり握ります。

5.素早く手前上方(内側の頭側)へ圧迫するように突き上げます。

6.異物が取れるか、傷病者の反応がなくなるまで突き上げを繰り返し行います。

※意識がなくなったら一旦ハイムリック法は止めて意識が回復しない場合は胸骨圧迫法で心肺蘇生を開始します。

7.取れた場合は安心せずに診察を受けるようにしましょう。

※ハイムリック法は腹部の臓器を傷つける恐れがあります。処置後は医師の診察を受けることをお勧めします。

※異物を奥まで押し込む可能性があるため、異物を探すために口の中をのぞいたり指で探るなどは行わない。

B(Breathing:呼吸)への応急処置

呼吸の状態によって緊急度が変わってきます。

呼吸窮迫とは「呼吸数増加、努力呼吸増加」

呼吸不全とは「簡単な処置では換気・酸素化改善が難しい」となっており、呼吸不全はかなり良くない状態です。

(とるべき行動)

呼吸窮迫状態では「ABCDの安定化」のために酸素投与や輸液、可能であればモニターによる観察を行います。

呼吸不全に陥ってしまった場合は「必要であれば換気」「安楽な体位の工夫」「体位ドレナージ」「吸引」「医師へのコールまたは救急要請」が必要です。

C(Circulation:循環)への応急処置

ショック兆候の有無を判断します。

皮膚の冷汗・湿潤がないか、橈骨動脈の触知や脈の強さ・速さを観察します。

爪床を5秒間圧迫し、圧迫をやめてみて赤身が戻るのが2秒未満であれば正常ですが、それ以上の時間を要する場合はショック兆候と判断する方法もあります(CRTといいます)。

ショックには以下があります。

代償性ショック:早期には血圧は低下しないが、皮膚冷汗・湿潤・頻脈・CRT延長などが生じることがあります。

これらは血圧を維持するためにおこる反応です。

代償機能が破綻すると・・・

低血圧性ショック:血圧低下を引き起こします。

(とるべき行動)

ショック時の対応はとにかく「ショック時は迷わずショック体位!」です。

そして「医師へコール」または「救急要請」です。

D(Disability:意識)への応急処置

意識が正常な状態とは「覚醒していること」と「周囲を認識できる状態」になります。

重要なポイントは他者を認識できていることです。

意識レベルを評価するスケールにJCSやGCSがよく用いられます。

生命に関わる中枢神経の異常を判断することも重要です。

各種スケールでの評価に加えて、瞳孔の左右差やサイズの観察・麻痺の程度や左右差の観察・可能であれば血糖測定を実施できるとより良いです。

緊急性の高い状態のひとつに「脳ヘルニア兆候」というものがあります。

これは頭蓋内に出血、腫瘍などにより頭蓋内圧が亢進した際に脳の一部が一定の境界を越えて押し出された状態を言います。

代表的な症状には「頭痛」「嘔吐」「意識障害」「血圧上昇」「徐脈」などがあります。

(とるべき行動)

1.発症時間の確認

2.患者を一人にせず、意識レベルや神経学的所見の変化を観察する

3.体位の工夫:側臥位・頭部挙上(嘔吐の可能性があるため仰臥位にしない)

4.可能であれば血糖測定

5.医師へコール、または救急要請

意識障害を引き起こす原因には様々なものがあります。

考えられる原因を表にして持参しておくこともお勧めします。

E(Exposure:全身評価)への応急処置

訪問看護では、転倒による体動困難=大腿骨骨折や腰椎圧迫骨折の疑いに度々、遭遇します。

利用者さんが痛みが強く、動けない、動かせない場合には、救急要請が基本になります。

しかし、転倒後に何とか床から立ち上がり、痛みがあるものの動ける状態であることが多々あります。

そのような場合には、骨折を疑うための理学検査を行い、陽性であれば整形外科受診を勧めましょう。

※理学検査とは、患者の身体を直接観察・触診・聴診、打診などの方法を用いて行う検査。
患者の主訴(症状)や既往歴を基に、疾患や体の異常を発見するための重要なプロセス。

大腿骨骨折の理学検査

・下肢挙上テスト
脚をまっすぐ伸ばした状態で挙げてもらう、もしくは、介助で挙げる。股関節周辺に強い痛みが生じた場合は、陽性。

・股関節内旋テスト
大腿骨を内回し方向へ動かす=股関節内旋させる。股関節周辺に強い痛みが生じた場合は、陽性。

・立ち上がりテスト
骨折していた場合、患側体重をかけられない。自力で立ち上がれない場合には陽性。

腰椎圧迫骨折の理学検査

・叩打テスト
背中(脊椎の棘突起)を軽く叩く。その時に、痛みが強くなれば陽性。

・起立や座位移行テスト
座位から立ち上がる、または仰臥位から座位に移行する動作を観察。腰部に強い痛みが生たら陽性。

・前屈テスト
立位で体を前に曲げる前屈時に腰部へ鋭い痛みが生じたら陽性。

・側屈テスト
立位で左右に体を倒す。倒した側に強い痛みが生じたら、陽性。

3.家族への連絡

訪問看護の利用者さんの多くは、老々介護であることが多く、緊急時に連絡をするキーパーソンが別居している長男、長女などの家族であることが多いです。

そのため、救急搬送となった時に家族が病院へ同行できない事が多いです。

救急搬送になる場合、訪問看護師は電話連絡にて家族と病院との橋渡しを行います。

下記に示した家族に伝えるべき内容、病院へ伝えるべき内容を把握しておきましょう!

家族に伝えるべき内容

発生状況:「〇〇さんが△△時に□□(転倒、意識消失など)しました。」
現在の状態:「意識はある/ない、痛みが強い/軽い、呼吸は正常/苦しそう。」
搬送の必要性:「病院での診察が必要なため、救急車を要請しました。」
搬送先と対応:「〇〇病院に搬送される予定です。家族の方も同行されますか?」
緊急時の対応:「今後の対応について、ご家族の意向を病院側に伝えてもよろしいですか?」
「診察結果や入院の有無について、病院から直接ご連絡があると思います。」

病院へ伝えるべき内容

利用者の既往歴・服薬状況(可能であればお薬手帳の情報も伝える)
キーパーソンの連絡先(病院側とスムーズにやり取りできるように)

4.医師への報告準備

状態が変化したときに医師へ報告する場面も多いと思います。

時々、こちらが感じている緊急度と医師からの返答に温度差を感じることってありませんか?

それはもしかしたら看護師が現場で観察した内容やアセスメントが正しく医師へ伝わっていないのかもしれません。

医師から適切な指示を引き出せるかどうかは、看護師の報告内容が鍵かもしれません。

医師へ報告する際には「SBAR」を参考に情報をまとめて簡潔に伝えられるように準備しておきましょう。

以下にSBARフレームワークの例を示します。

S(Situation:状況)

  • 「〇〇さん(利用者名)が本日〇時〇分頃から××の症状を訴えています。」
  • 「現在、意識レベルは〇〇で、呼吸状態は××です。」

B(Background:背景情報)

  • 「この方は△△の既往があり、現在〇〇の治療中です。」
  • 「服用中の薬は××で、最近の状態は〇〇でした。」

A(Assessment:評価)

  • 「バイタルサインは〇〇で、××の可能性が考えられます。」
  • 「現時点では〇〇の処置を実施しています。」

R(Recommendation:提案)

  • 「今後の指示をお願いします。」
  • 「救急搬送の必要性について、ご判断をお願いします。」

まとめ

訪問看護では、救急対応のスキルが求められます。

特に、冷静に状況を判断する力、的確な医師への報告スキル迅速な救急搬送の判断 が重要です。

日頃から緊急時の対応手順を確認し、医師との連携をスムーズに行う準備をしておきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

訪問看護ステーション アスエイドでは、スタッフ間が腹を割って話せる関係性をモットーに困ったらすぐに相談する、一人で悩まない職場づくりを行っています。

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