訪問看護での訪問看護ステーション利用者の傷病別内訳は、脳血管疾患が12.9%で最も多く、次い
で認知症(アルツハイマー病含む)が8.9%、悪性新生物が8.5%、筋肉骨格系が8.4%、糖尿病が5%
の順になっています。
※公益財団法人日本訪問看護財団による「訪問看護の現状とこれから 2022年版」より引用
日本における糖尿病有病者は年々増加傾向であり、特に高齢者の割合が高くなっています。
訪問看護でも糖尿病ケアを行うことが多くなっています。
今回は、糖尿病の利用者さんが安心・安楽に在宅生活が送れるために、訪問看護が行う糖尿病ケアについて紹介します!
訪問看護が行う糖尿病ケアは、大きく分けると6つになります。
それぞれについて解説します。
糖尿病の利用者さんは、体調を崩し、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状があったり、食事ができていなかったり、睡眠不足などでストレスフルになっていると血糖コントロールが乱れることがあります。
高血糖状態が続くと口渇が強い、尿量増加、体重減少、眠気、手足の痺れ、起立性低血圧などの症状が現れ、合併症へ進行させる恐れがあります。
そのため、一般的な体調と合わせて高血糖症状の有無や合併症の予兆を確認していきます。
合併症の予兆としては、皮膚の乾燥、足の浮腫や傷、頻尿、目のかすみなどが考えられます。
また、糖尿病の利用者さんは、毎日の生活の一部として血糖コントロールを意識しなければいけないため、イライラしたり、怒りっぽくなったり、無気力になってしまう場合もあります。
体調確認では、糖尿病の病状だけではなく、精神面に関しても傾聴していく必要があります。
糖尿病の利用者さんは、自覚症状がないために薬の内服を忘れやすかったり、血糖値などの数値が安定してくると治ったと勘違いして、服薬を中断してしまうなど、薬物治療に対する意欲が低い方がいます。
そのため、訪問看護では体調管理と合わせて服薬に関する問診を行い、管理をサポートします。
糖尿病の利用者さんは、服薬だけでなく、インスリン注射で血糖コントロールを行っている方が多いです。
インスリン注射は、毎回、新しい針を装着して必要量を設定してから、本人、もしくは家族が注射を行います。
しかし、高齢者の中には手技がなかなか習得できない方、針を使いまわししてしまう方など、適切に実施できない場合があるため、訪問看護では、手技の確認と実技を行いながら指導を行います。
糖尿病の治療の基礎は、内服薬やインスリン注射ではなく、食事と運動になります。
糖尿病の利用者さんの食事は、よく噛んで食べること、規則正しい時間でバランスの良く食べること、腹八分目で止めておくこと、寝る前に食べないことなど、様々なことを心がけることが推奨されています。
そのため、食事量が減り低血糖になっていないか、症状が安定していると思い込んで食べ過ぎていないかなど、糖尿病の利用者さんの状態にあった食事が行えているかを確認、指導することも訪問看護の重要な役割になります。
糖尿病では、高血糖状態が続くと神経障害が起こり、足の感覚が鈍くなり、小さな傷や水虫などの悪化があっても気づきにくなります。
また、動脈硬化や抵抗力の低下も起こりやすいため、傷が治りにくく、悪化しやすい傾向があります。
その中でも、特に気づきにくのが足の異常になります。
そのため、訪問看護では足の異常の早期発見と早期治療のために、足の観察、清潔ケア、爪切り、靴の選定などのフットケアを行います。
糖尿病の治療の基礎は、内服薬やインスリン注射ではなく、食事と運動になります。
糖尿病の利用者さんの運動は、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されています。
有酸素運動では筋肉への血流量が増えることで血糖が細胞内に取り込まれ、筋力トレーニングでは筋肉量が増えることで、インスリンの効果が高めてくれます。
訪問看護の利用者さんは、高齢者であることが多いため、いきなり散歩したり、激しい運動をするのではなく、自宅でできる体操を訪問看護の時間に一緒に行いながら、徐々に運動強度を上げていきます。
訪問看護ステーション アスエイドには、オリジナルのアスエイド体操があるため、糖尿病の利用者さんの運動で役立てています。
糖尿病の病状に合わせた食事が難しかった利用者さんとの関わりを紹介します。
この利用者さんは、高血糖になっていても、自覚症状が少なかったため、食べる量を気を付けながらも好きな物を食べていました。
そこで、訪問看護師が利用者さんに毎日の食事内容を書き出すための記入用紙を作成しました。
次の訪問時に、1週間の食事内容を確認すると、毎日のようにケーキやマドレーヌなどの洋菓子を食べていることが分かりました。
そこで、利用者さんと一緒に、食事内容の振り返りと食べても良いお菓子の確認を行いました。
糖尿病の方が食べても良いおやつでは、糖質とカロリーが少なく、食物繊維やたんぱく質が多いものが勧められます。
例えば、寒天ゼリーやガム、おからで作ったドーナッツやクッキー、野菜で作られたチップスなどになります。
また、ポリフェノールは糖尿病の合併症予防になると言われているため、糖分の少ないハイカカオチョコレートも勧められます。
最近では、ノンカロリーや糖質オフのおやつもたくさんあるので、おやつの選択肢が広がっています。
この利用者さんの場合は、食べても良いおやつの知識を活用し、好きなおやつを継続的に食べつつ、血糖値を安定させることができました。
食事内容を書き出す記入用紙は、3か月に1回の季節の変わり目に継続して行っています。