日本では、「食べる力」=「生きる力」であり、食育を大事にしましょうと言われています。
訪問看護の利用者さんの多くは高齢者であり、加齢に伴う唾液の減少、飲み込みやむせ(咳)の反射の低下から「食べる力」が衰えてしまい、低栄養になっている傾向があります。
そのため、訪問看護では普段の食事内容、食事動作などの評価を行い、必要に応じて食事介助を行います。
今回は、訪問看護における食事介助について紹介します!
訪問看護における食事介助では、利用者さんができる食事動作と介助方法の獲得、栄養状態の改善を目的にして関わります。
食事動作では、どのような環境で何を食べているのか、口腔機能の低下はないか、を中心に観察します。
環境は、食欲に影響するため、ベッド上ではなく食卓で食べることが望ましいです。
また。食事をする時には、背筋をまっすぐ伸ばした姿勢、もしくは頭部がやや前傾した姿勢で座っていることが望ましいです。
ベッド上で食べる場合には背中や足の角度を調整し、姿勢を調整していきます。
口腔機能に関しては、厚生労働省が公表している「口腔機能自己チェックシート」を活用することで、看護師だけでなく、家族も簡単に確認できます。
飲み込みやむせの反射の低下がしており、誤嚥のリスクがある場合には、食材の選定や性状(柔らかさ、滑らかさ)、とろみについて検討していきます。
食事動作の評価をもとに、看護師が訪問した際に実際の食事介助を家族に見てもらいながら、慣れてきたら家族に介助方法を伝達していきます。
栄養状態の改善では、普段の食事で十分に栄養を摂れていない場合に栄養補助食品を検討していきます。
栄養補助食品は、市販されているもの、医師から処方されるものの2つがあります。
市販されているものは、ドラッグストアや通販で購入することができ、様々な味と形態(ゼリータイプやドリンクタイプ)がありますが、やや費用がかかってしまいます。
継続的に栄養補助食品が必要であると考えられる場合には、主治医に相談し、処方してもらうことで費用が安く済みます。
利用者さんの状態に合わせて、栄養補助食品は検討していきます。
訪問看護ステーション アスエイドでは、森永が販売している栄養補助食品のサンプルがあるため、必要に応じて利用者さんに試してもらっています。
栄養補助食品|製品情報|株式会社クリニコ (clinico.co.jp)
家族が食事介助を行って生活していた利用者さんがいました。
訪問看護の日に、「最近、ご飯の時に口を開けてくれない」、「食べる量が減ってきた」と家族から相談を受けました。
その日のケアでは、看護師が口腔内の状態の確認させてもらいました。
この利用者さんの口腔内は、汚れの貯留と乾燥があり、歯茎の血色が悪かったです。
そこで、口腔ケアと唾液腺マッサージを看護師が行い、家族にも指導させてもらいました。
口腔ケアは清潔を保つことや潤いを与えることだけでなく、口の中や周囲を刺激することになり「食べるぞ!」という意識への働きかけにもなります。
唾液腺のマッサージは、食事前に行うことで唾液の分泌が多くなり、口腔内が潤って飲み込みがしやすくなります。
その後、家族が丁寧な口腔ケアを行ったり、食事前の唾液腺マッサージを行ったことで、口を大きく開けて食事できるようになりました。
看護師が食事介助に関わることで「食べる力」をサポートできると思います!